仕事に疲れたら、病む前に「ほどほどキャリア」を志向しよう

仕事・キャリアの悩みが尽きない現代

「朝から晩まで働いてプライベートがない」という悩みを抱く人は多いです。社会問題化しているブラック企業のように毎日終電まで働くのは論外ですが、1日8時間の労働であっても1日の3分の1は働いているわけで、それを5日続けたら残業なしでも十分長いと思います。「贅沢だ!」と言われそうですが、週休3日制の動きなど、ここ最近これまでの当たり前を問い直す風潮は出てきています。また、OpenWorkといった企業口コミサイトの一般化、SNSの活発化によって「他社で働く人の等身大の情報」を手に入れやすくなっています。そんな中で「なんで今の仕事をしているんだろう」「仕事を変えたら違った人生を歩めるかもしれない」など、現在の仕事を疑う視点も出てきます。新卒で入った会社に終身雇用されて定年退職するという昭和の当たり前が崩壊した分、仕事やキャリアに関する悩みは発生しやすい環境になっていると言えるでしょう(選択肢が増えれば増えるだけ悩みも多くなるわけです...)。

低成長時代の合理的選択=ほどほどキャリア

昭和的キャリア観では、「出世を目指さない」「ライフステージにあわせて退職・転職する」という選択肢は、ある種「世捨て人」のように思われる行動だったでしょう。高度経済成長期では、みんなで働いてもっと豊かになろうという雰囲気が醸成されていたのかもしれません。社会・世間・みんなといった要素の存在感が大きかったのです。バブル崩壊後、日本経済が停滞している状況では、なかなか自分の仕事ぶりが業績につながらず給料も上がりません。「時代のせい」とは言い切れませんが、やはり生まれた時代が人生に与える影響は大きいです。ただ、経済の停滞という悪い変化だけでなく、「多様性」を重んじる風潮が高まり、世間体の影響力が弱くなりました。そんな中で、最初に述べた「出世を目指さない」「ライフステージにあわせて退職・転職する」は一部の変わり者の選択肢ではなくなりました。変わり者の選択肢ではなくなったどころか、働いた分の見返りを得にくくなっている今の時代においては、あらゆる人にとっての最適解だとも思えます。

大事なのは「メンタルヘルス」と「ワークライフバランス」

どうせ頑張ってもなかなか稼げないのであれば、頑張りによる精神の疲弊やプライベートの犠牲は無駄だと言えます。そんな状況の打開策としてできるのは、「頑張りすぎないこと」か「頑張りが報われる環境に身を移すこと」。どちらかというわけではなく、どちらも実践すべきです。価値観の違いはあれど、メンタルヘルスとワークライフバランスほど優先すべきものはないと私は考えます。体・心の健康は働くうえでの資本。特に心の健康は職場で問題になりやすいため、労働時間・仕事内容から意識的に守る必要があります。そして、人生は仕事だけではありません。当然仕事が充実しているに越したことはないのですが、過度な期待は禁物。会社やクライアントが関わることによって対価を得る仕事では、どんなに好きな業種・職種だとしても嫌なことは発生します。一方、ワークライフバランスの「ライフ」の部分には、自分だけでコントロールしやすい趣味の領域も含まれるので、ワークの時間を最低限に、ライフの時間を確保するバランスを保つのは重要です。また、私の経験上、結婚や子の誕生といったライフイベントで「ワークライフバランス」の重要性は高まります。そういった変化に強いという意味でも「ワーク」はコンパクトにしておきたいものです。

バリバリ、ガツガツ働いて自分自身を消耗するくらいなら、ほどほどに働くマインドを持ち、ライフステージなどの変化にあわせて持続可能なキャリアを築いていくのが合理的です。目の前の仕事に対して真面目に向き合いすぎず、逃げ道を常に用意しておくという戦略がきっと自らを助けてくれます。その一歩目としては、仕事・キャリアの現状を知るということ。転職前提でなくとも、転職サイトやエージェントを活用してみるということをおすすめします。